【良書のススメ】ライトゲームアカデミー/加来 匠

ライトルアーゲームを嗜む方であれば、おそらく一度はその名前を聞いたことがあるであろう、LEON(レオン)こと加来 匠氏。その釣りに対する知識、技術の深さは言うまでもなく、日本で指折りのライトゲーマーであることは疑いない著者。

本書は、ありきたりなテクニックを伝える本ではありません。誤解を恐れずに言えば、「魚釣りとは何か」を書いた本です。さらには、魚釣りという手段により「自然と対話する方法」が書かれてある本ということもできるかと思います。



ライトゲーマーのみならず、釣りに関わる方、自然を愛する方、様々な方に読んでもらいたい良書です。

小手先の技術を伝える本ではない

  • 道具やテクニックに頼る釣りには限界がある
  • 魚を理解すること、自然を理解することが、魚に近づく早道である

まず初めに…「明日使える必釣テクニック」が記されていると思って読むと後悔する本かもしれません。

もちろん、この魚種にはこういうルアーが効果的で、このような攻め方が釣果を伸ばすコツである、と言ったことは書かれているのですが、著者が述べたいのはそういうところではないと感じました。正確には、僕の興味がそこに置かれなかったというべきかもしれません。小手先のテクニックよりも大切なことがびっしりと書かれています。

著者は、「道具やテクニックに頼る釣りの限界と、そこからの脱却」を説いているように思います。そして、その本質は「魚を理解すること、ひいては自然を理解すること」にあると感じました。

僕らが相手にしている魚は、それぞれが命を持っており、それぞれの脳で行動しています。個々の魚には大なり小なり「意思」があり、「好み」があり、また「ポリシー」めいたものすらあるのかもしれません。そういった「気持ち」を理解することができなければ、小手先のテクニックは無意味なものであり、一匹の魚すら手にするのは困難であると、本書を読んで強く感じました。

身近な体験に置き換える 〜今、食べたいものはなんですか?〜

  • 我々には、その時々で「食べたいもの」がある
  • 魚も同様で、「食べたいもの」を想像するべき
  • 「釣れるルアー」を買い漁る意味は薄い

僕はもともと牛肉が好きなのですが、大人になるにつれて豚肉や鶏肉の美味しさがわかるようになり、最近はすっかり鶏胸肉にハマってしまっています。また、年を重ねるにつれて、肉だけではなく魚の美味しさもわかるようになってきました。また、お酒を飲むようになってからは、子供の頃はほとんど食べなかった漬物の味も覚えました。こうして普段食べているものを見直すと、子供の頃に比べて随分変わったな、と感じます。

何を唐突に、と感じた方も多いかと思います。お前の食の変遷なんぞどうでもいい、と思うかもしれませんね(笑)ですが、こういう「食の好み」があるのは、果たして人間に限ったことなんでしょうか?

いえ、魚にだって食の好みはあります。メバルの場合、幼魚はプランクトン類を食べることがほとんどですが、成魚になると小魚や子イカなどを食べるようになります。また、成魚にしても、小魚を食べる日もあれば、アミしか食べない日もあったりと、その時々で「食べたいもの」が変わるのです。人間と一緒です。

例えば、仕事帰りや学校帰りに無性に肉が食べたくなったと想像してください。「どれ、ちょっと食べて帰るか」という気分になったとき、貴方は道を走る「石焼〜き芋〜♪」に興味を示すでしょうか?だいたいの人は、肉のスイッチが入ったら、ステーキハウスとか焼肉屋とか、そういう肉肉しいお店を目指すと思います。

魚も、今日はベイトフィッシュの気分、今日は甲殻類の気分、いややっぱり貝類の気分…があるはずです。そんんな魚の気持ちを無視して、「メバルにはこのルアーが実績ナンバーワン!」と、同じルアーを延々と投げ続けては、釣れる魚も釣れないというものです。そのことが理解できれば、釣具屋で「釣れるルアー」を買い漁ることの意味の薄さを感じ取ることができるはずです。

今の季節、今の時間帯、このロケーションにおいて、魚は何を欲しているのか?そんな基本的なことを見失いそうになったら、一呼吸おいて、「自分が今食べたいもの」を想像してみるといいかもしれません。

魚の気持ちを理解するには、勉強と実践の積み重ねしかない

  • 一足飛びに正解にたどり着くことは難しいものだ

本書は、いろいろな身近な体験への置き換えを駆使して、「魚の気持ちを理解する」ことを教えています。ですが、それがなかなか難しいのも事実…

結局のところ、魚の気持ちを理解するには、まず魚について知ること、そして自分が通っている釣り場について知ることが不可欠です。その上で、ルアーを投げて、釣ってみて、空振りしてみて、ひとつひとつの推論を実践に当てはめて正解に近づいていくほかありません。

しかし、そんな地道な、というか地味な努力を積み重ねられるアングラーが果たしてどれだけいるのか…僕自身、そのプロセスをどこまで徹底できているのかと問われたら、胸を張れるほどのことはしていないかなぁ…なんて思ってしまいます。「前回釣れたルアー」をどこか漫然とセレクトしてしまっている自分に、大いに反省を促したいところです。

それと同時に、この「勉強と実践の積み重ね」が重要であることは、何も釣りに限ったことではないな、と気づかされました。

本書は「釣りの本ではない」のかもしれない

  • 釣りは「大自然へのコンタクト」の一手段
  • 魚の反応一つで、季節の移り変わりや環境の変化を感じ取れたら…

本書は「ライトゲームアカデミー」の名に相応しく、魚に近づくためのノウハウがふんだんに詰め込まれた良書だと思います。しかし、果たしてこの本を「釣り」カテゴリーにとどめて良いのか?というのが、本書を読み終えた僕の感想でした。

僕が本書を通じて感じたのは、「魚釣りというアクティビティは、大自然へコンタクトする一つの手段である」ということです。我々釣り人は、ともすれば「釣れた、釣れなかった」という結果だけを受けて一喜一憂しがちですが、その裏には広大な背景があって、釣れた理由、釣れなかった理由が必ず存在しています。

魚に出会うために、魚の性質やそれらの住む環境を理解することが重要であることは述べました。そういったことへの理解が深まれば、その日の魚の反応から、逆にその時の自然の様子を想像することも可能になります。「このルアーのこのアクションに反応した…ということは、湾内にはこんなベイトが入っていて…なるほど、もうすぐあの魚も釣れる季節か」なんてことが理解できるようになったなら、それはもう文字通り「自然との対話」が成り立っている状況です。魚の反応一つで、季節の移り変わりや環境の変化が頭の中に広がるなんて、想像しただけでワクワクしませんか?

このログで記したことは、本書の内容の極々一部です。是非実際にこの本を手に取って、LEON氏の世界に触れてみてください。最後のページを読み終えた時、「あのルアーは釣れる」「このルアーはダメだ」などという狭い考えはどこかに吹き飛んでいるはずです。自然との対話、ぜひ挑戦してみましょう。

にほんブログ村 釣りブログへ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUT US
ポコペンDIY系釣り師
釣り、カメラ、ドライブ、登山、電子工作、プログラミング、料理などなど、興味の赴くままに手を広げています。釣りブログを標榜していますがいきなり何を書き始めるか自分でも予想がつきません…